夜、花火の音がしたので弟の部屋へ行って、カーテンを開けてみた。
近所の神社で秋葉さんのお祭りがやっている。
手筒花火は木立に阻まれて煙しか見えないけれど、仕掛け花火は森の上まで飛ぶのでよく見える。
ベランダに出て花火を見ていたら、去年のことを思い出した。
そのとき私は屋根の上から花火を見ていたこと、携帯で花火の写真を撮ろうとしたけれどうまくは行かなかったこと。
お祭りに行く人や帰る人が来るたび、屋根の影に隠れたこと。
瑣末を辿っていたら、携帯に届いた、男の子からのメールを無かったことにしたことまでも思い出してしまった。
お祭りに打ち上げ花火が無くなったのは去年から。今年は日程が一週間早かったと思う。
私はずいぶん前からお祭りに行かなくなった。
いつかは出て行くからだろうか。
山茶花」P95