イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する (新潮文庫)

イニュニック 生命―アラスカの原野を旅する (新潮文庫)

昨日から通勤中に読んでいる本です。母の本棚から借りました。
たくさんのふしぎ」の「クマよ」という本で出会った作者さんのエッセイです。
出来事の中から自分の考えに降りていく、という感じがこの前読んだ梨木香歩さんのエッセイに似ているなあと思います。読むとすっとこの本の世界に入っていけてとてもいいです。
以前イヌイットエスキモー)の狩猟のドキュメンタリーで、銃を向ける人間に向き合って立った(多分)カリブーの光景を見たのですが、この本のある箇所に「追い詰められたカリブーが死を享受するように諦めてしまう」という話があって、そういうことだったのか、と合点がいきました。その文に続く、「個々の死が、淡々として、大げさではないということ。それは生命の軽さとは違うのだろう。きっと、それこそがより大地に根ざした存在の証なのかもしれない」という箇所では、人間の死を悲劇的に煽る風潮を見るにつけ何かもやもやした気分になっていたのですが、そのことへの回答になっているようでとてもすーっとした気持ちになりました。泣くことばかりが感動じゃないな、とこの本で気がつきました。
この本には何度か著者の友人や親しい人の死の話が出てくるのですが、そのときにこの人自身の死を考えていました。

怪談徒然草 (角川ホラー文庫)

怪談徒然草 (角川ホラー文庫)

メディアファクトリー版をすでに持っていますが、文庫版も加筆が楽しみで買いました。
小さくて持ちやすいので通勤時間に読んでいます。(帰りは夜で怖いので行きに読んでいます。)以前のよりも編集の形が変わっていますが、やはり怖い。怖くて楽しい。
某お屋敷の続編はまだ禁忌ネタのようでなくて少しがっかりしたのですが、怪談エッセイ、好きです。