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バイトが終わって坂を上がって帰ってくると、寮につく頃には汗だくで、それが今日は夕立のあとだったから、空気がやけによそよそしかった。転々と灯りのともる坂を二人で歩いて、その水っぽくすり抜ける空気を吸いながらとりとめもない話をして、変に笑って帰った。
眼科の庭のいちじくが香る。甘い匂いがする。私の身体からは血の匂いがする。
(何も怪我をしたんでない。女だからするのだ。ナプキンで隠したってすぐわかる。)
今日から寮の共同浴場は使えない。だから近くの銭湯へ、と思っていた矢先、先触れが来た。仕方が無いから銭湯は止して洗面所の流しで髪を洗った。
開けた窓からいちじくが香る。闇の中から甘い香りがする。腿の間から血の匂いがする。「さよならミゼット」(P7)(P13)より
時間軸と物の場所を思い通りに動かしてみる。