船を建てる 上

船を建てる 上

アンテナ先の方が紹介していたのを読んで興味を覚えたもの。表紙の感じでは(「多くの人に愛された〜」という帯の文章を勘違いしたせいもあるのですが)映画「ペンタの空」*1みたいな人間と二匹のアシカの物語だと思っていました。でも帰宅後読んで見たら、アシカ(あとウサギとカエル)の世界の人生模様の物語でした。
なんといっていいか分からないけれど、とてもちくちくした物語で、真夏の真昼の天気が良すぎて誰もいない道路を横切ってポストへ向かうあの感覚とか、この間の一人旅行中に車で走った山と田んぼの中の舗装道路とか、そういう風景を喚起します。
この物語の肝は登場するのが人間ではなく(人間も一部出てくることは出てきますが)動物ということだと思います。人間だったらちょっとキメ過ぎで煙たくなってしまったと思うのです。
とにかく一話一話が染みます。こんなに琴線に触れるものがあったなんてとてもすごいことだと思います。
一番好きで、一番苦しい気持ちになるのは「モンタナの鮭釣り」という話。一番最後は怖くてさっとめくってしまったけれど、また戻って眺めたり、次の話に進んでも、そこにそれがあるというのが強く感じられる話です。(ホラーではないです)

裏庭 (新潮文庫)

裏庭 (新潮文庫)

これはちょっと前に読んだ本。一度小学生の時分に読んでいたはずなのですが、鏡から裏庭へいけるという所しか覚えていなかったので、途中で挫折したのかもしれません。かつて途中で挫折したと思われる理由は、この中に出てくる母親や父親に固有名詞があって、一個人としての行動が書かれているため、当時は混乱したのだと思います。異界を旅する描写にミヒャエル・エンデの「果てしない物語」を思い出しました。

*1:動物ファミリー映画。小学生のときに見ました。