映画「墨攻」を見てきました。ちょっと前からCMを見て気になっていました。面白そうなアクション物だと思っていたら、戦争物でした。お客さんは中高年のご夫婦が多かったです。
主人公役の俳優さん(アンディ・ラウ)に近視感を覚えていたのですが、途中でイチローに似てるんだと思いました。
以下印象深いところ考えたこと等国を守るため戦おうという士気の上がる中、戦は嫌だと逃げ出す農民の家族(結局浅はかな思いつきでしかない)、愚鈍なのかと思ったらしたたかな国王、老将軍の最期が藁を積んだ馬車で隠されるところ(映画論の「秘すれば花なり」を思い出しました。)仄めかしておいて結局未遂の恋人(これは好感が持てました)、西洋系(アフリカ系?)の奴隷、拷問シーン(特に舌を切るところ)、牛将軍の孤立と最期の顔、結ばれない主人公とヒロイン、巷将軍の最期、司令官(正確な役職を忘れました)が自死したのを見て、国を捨てる二人の梁軍兵士、最期の字幕つきナレーション。
全体的に悲しいというより無益という感じがしました。だれも必死で自分というものを守ろうとして、でも大きな流れで見たら結局は砂粒みたいなもので、見た後に人に勧めたいとか、面白かった!というものでもなく、つまらないというものでもなく、戦いの虚しさというものがテーマのようでした。人間活動の矮小さというか。ハッピーエンドとはいえない作品ですが、ラストあたりの兵を率いて国へ帰るように言われた将軍が留まって死を選ぼうとするのを部下の兵がよってたかって担ぎ上げていくところがコミカルでした。(これも深く考えれば、必死さがコミカルに見えてしまう悲劇の気もします。最高司令官である巷将軍は戦いに負けて死ぬことが出来たけれど、兵を率いて帰還することを命令された将軍は負けながら生き永らえることになるのだから、どちらが本当は幸せなんだろうかと思う)
初めは趙軍が完全な悪でそれを倒してハッピーエンドという流れだと思っていたけれど、(確かに攻め入る軍は悪なのだけれど、)国にもというか人物(国王、農民、兵士)そのものの中の良くない部分や判断ミスで悪い方へ向かっていて、誰もが地位を含めた自分をを守るために必死でかなしい。
望もうが望まなかろうが戦争をすることは不幸にしかならないんだと思う。
あと、梁国を占領後、城門前の丘で二人の将軍が話している後ろで、もがいている人影が写っているのだけれど、あの人影は何なのか分からなかったです。主人公をおびき寄せるための見せしめに殺される梁国民だろうか。
そんなこんなでいろいろ考えましたが、冒頭の部分の謎がだんだん解けて、ラストに繋がって綺麗に終わったのがとてもよかったです。

勘違いから普段絶対見ないであろう戦争ものの映画を見たわけですが、だた残酷なだけというよりは人間そのものを描いていて見てよかったなあと思いました。字幕版で見られて良かったです。中国語は聞きなれないのでとても新鮮でした。